再選が決まり、あれこれと発言(だが、それは彼の率直な心情でもあるのだろう)がニュースになっているこのタイミングで、この映画が上映されるとは。

若き日のドナルド・トランプ次期大統領をモデルにした、ドラマ映画(ドキュメンタリーではない)。(基本的には)経済的に非常に恵まれた家に育ち、「お金を動かしてお金を得る」ことでデカくなってきたであろう人を映画化するのは、ドラマティックな展開をたっぷり盛り込めて、観る者(=庶民)の共感もより得ることができるであろう「這い上がり系」「裸一貫系」の人をモチーフにするよりもはるかに難しいのではないかと思う。そこでこの映画で重要な役割を果たしている人物は誰かとなると、ユダヤ系で同性愛の傾向を持つロイ・コーン弁護士ということになる。彼との出会いは、おそらくトランプ家に訪れた最大の危機によってもたらされたのであるが――。ドナルド・トランプ青年の、ロイ・コーンからの「守・破・離」が、この映画の核であると見た。
描かれている時期は1970年~80年代のニューヨークが主なのだが、すその太いズボン、幅の広いネクタイやシャツの襟、長髪やアフロなどのヘアスタイルなど、まさにあの時期そのものという感じで、この「雑踏」をよく、今、セットで再現できたものだと感銘を受けた。トランプ役のセバスチャン・スタン、コーン役のジェレミー・ストロングも、往年のトランプやコーンの写真と見まがうほどそっくりに感じられる。そして「本人」のマチズモやホワイト・パワーに尋常ならざる年季が入っていることも、この映画はやんわりと示す。

監督・製作は、主に北欧でいくつもの賞に輝いてきたアリ・アッバシ。70~80年代のヒット・ポップスも効果的に挿入されている。
映画『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』
2025年1月17日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
監督:アリ・アッバシ
脚本:ガブリエル・シャーマン
出演:セバスチャン・スタン、ジェレミー・ストロング、マリア・バカローヴァ、マーティン・ドノヴァン
2024年/アメリカ/英語/123分/カラー/ヴィスタ/字幕翻訳:橋本裕充
配給:キノフィルムズ
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