いいタイトルだ。ひとの生命も世の中も永遠ではない。だからその時を大切に生きる。あわただしい毎日の中でふと忘れてしまいがちになることを、この映画はやさしく教えてくれる。

主人公は若手一流シェフのアルムートと、離婚してから冴えない日々を送るトビアス(劇中での発音はトバイアス)。二人の10年間がモチーフだ。なかなか不思議なシチュエーションで恋におち、年齢もバックグラウンドも相当異なるふたりだけに、いちどズレが生じるとなかなか大変なところもあったようだが、そこは互いにコントロールして修復に努め、無事に娘も誕生した。が、アルムートには病の影が迫っていた。どこまで生きることができるのかはわからない。彼女は「思いっきり生き切りたい」と思う。それは夫や娘に対してできる、彼女なりのベストの方法であったろう。
アルムートは人生のラストランを、文字通り燃焼するかのように過ごす。病が重くなるほど、生へのパワーは増していくかのようで、晩年を描くシーンでの笑顔の力強さは実に印象的だ。主演はフローレンス・ピューとアンドリュー・ガーフィールド、監督はジョン・クローリー。皆、アカデミー賞ノミネート経験がある。北米での配給権はスタジオA24が獲得、これまでの同スタジオの作品とは相当に毛色が異なるといってもいいすぎではないとは思うが、ストーリーや描写には少なからず「ひねり」があり、ベタな難病感動物語というわけではない。
映画『We Live in Time この時を生きて』
6月6日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督:ジョン・クローリー
出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド
2024年|イギリス・フランス|英語|108分|カラー|スコープ|5.1ch|字幕翻訳:岩辺いずみ|映倫区分:G
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
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