ゴダールが絶賛し、トリュフォーが嫉妬したという逸話をもつ才人=ジャック・ロジエの特集上映の白眉となる長編、『オルエットの方へ』

 来年に生誕100年を迎えるジャック・ロジエ監督。彼が手がけた長篇第二作『オルエットの方へ』が4Kレストアされ、7月5日から東京渋谷のユーロスペースで上映される。“長篇”という言葉にぴったりの約160分の作品で、撮影は1969年とされる。そして挿入曲にはロック・ミュージカル『ヘアー』からの「アクエリアス~レット・ザ・サンシャイン・イン」などが使われている。

 69年といえばアメリカではウッドストック・フェスティヴァルがあった年、日本では学生運動が燃え盛っていた年、ブラジルのアートの世界では「トロピカリア運動」から次なるステップへと踏み出そうという頃か。フランスでも68年に五月革命があったのだが……。映画ではヴァカンス(日本の「お盆休み」とかとはスケールがまるで違う)の風景が日記形式のようにして描かれている。女性たちが男性たちと出会い、それは恋というモードに流れ着いて、楽しかったり切なかったりむかついたりする日々を送っているうちに確実に時間は流れ、そのヴァカンスにもいつか終わりが来る。そう、終わりが来ることは誰もがうすうす気づいているのだ。しかし、そのタイミングがどこでやってくるのか、はっきりとわかる者は誰もいない。海が輝けば輝くほど、お刹那の苦さが増すような感じだ。あと、「うなぎ」をこういう風に用いるとは、と、個人的には大きく唸らされた。

 この上映と連動して、やはり7月5日からロジエ監督の次の作品も同時上映される。ラインナップは『アデュー・フィリピーヌ』2Kレストア版、『トルテュ島の遭難者たち』4Kレストア版、『メーヌ・オセアン』4Kレストア版、『フィフィ・マルタンガル』デジタル・レストア版、『ブルー・ジーンズ』2Kレストア版、『パパラッツィ』2Kレストア版、『バルドー/ゴダール』2Kレストア版という実に興味深く、時代範囲の広いものだ。しかも『トルテュ島の遭難者たち』の音楽はナナ・ヴァスコンセロス、ドリヴァル・カイミ、『メーヌ・オセアン』の音楽はシコ・ブアルキ、フランシス・ハイミなのだから、これはもう、心あるミュージック・ラヴァーなら前のめりで劇場にかけつけるに違いない。

映画『オルエットの方へ』

2025年7月5日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
配給:エタンチェ
(C)1973 V.M. PRODUCTIONS/ANTINEA

公式サイト
https://www.jacquesrozier-films.com/