1945年8月に行われたアメリカ軍の日本への原爆投下から35年を経て、日本赤十字社の看護師たちが発表した手記「閃光の影で-原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記―」が原案となった1作。敗戦から今年で80年となり、人間という生き物の寿命上いたしかたないとはいえ、リアルでその惨状を知る者は減る一方だ。ゆえに当時の生存者による手記が映画という形で、こうして伝えられてゆくのは実に意義のあることだと確信する。

看護師の手記、というのもポイントだ。ほとんどの男たち(看護師にとっては夫、彼氏、兄弟、友人にあたるひともいただろう)は軍隊に入っていて、その場所にはいない。子どもがいて、老人がいて、女性がいて、看護師たちの上司がいる。銃や戦車で戦える者などもういないところに、しかもある宗教の豊かな歴史を持つところに、アレが落とされた。ご丁寧にも、3日前に落としたものとは異なる仕様のものが落とされた。イエローの頭上に2ヴァージョン落として、人体実験したかったのか? たまったものではない。
ハエ、ウジ、血は避けられないが、現実がこの∞倍の惨状だったことは明らかだ。被爆の現場で、どんな臭いがたちこめていたか、想像してみるのもいいだろう。物語の中心となる3人の少女たちを演じるのは、菊池日菜子、小野花梨、川床明日香という気鋭たち。凛としている。戦争に敗けてから、かつて彼女らにガミガミ言っていた女性上司は180度転身して、人目を盗んで先日までの敵とイチャイチャし始めた。しかし3人は誠実に、これからの人生に立ち向かってゆく。エンディングにも「いいところで終わらせるなあ」と声をあげたくなった。
ラストには本作の原案にも体験を寄せた元看護学生のひとりである山下フジヱさんが特別出演、その山下さんの思いが長崎出身の被爆者・美輪明宏が語りで表現される。監督は松本准平(脚本は保木本佳子との共同)、8月1日から全国公開(7月25日から長崎先行公開)。
映画『長崎-閃光の影で-』
7月25日(金)長崎先行公開 / 8月1日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国公開
<出演>
菊池日菜子
小野花梨 川床明日香
水崎綾女 渡辺大 田中偉登
呉城久美 坂ノ上茜 田畑志真 松尾百華 KAKAZU
加藤雅也 有森也実 萩原聖人 利重剛 / 池田秀一 山下フジヱ
南果歩 美輪明宏(語り)
<スタッフ>
原案:「閃光の影で―原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記―」(日本赤十字社長崎県支部)
監督:松本准平
脚本:松本准平 保木本佳子
主題歌:「クスノキ ―閃光の影で―」(アミューズ/Polydor Records)
作詞・作曲:福山雅治 編曲:福山雅治/井上鑑 歌唱:スミ(菊池日菜子)/アツ子(小野花梨)/ミサヲ(川床明日香)
制作プロダクション:SKY CASTLE FILM ふればり 配給:アークエンタテインメント 後援:長崎県 長崎市 公益財団法人 長崎平和推進協会
2025年/日本/日本語/109分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/映倫G
(C)2025「長崎―閃光の影で―」製作委員会