
オリジナル・タイトルは“戦争の霧”という感じか。画面は思いっきり鮮明だが、情報戦をモチーフにした物語展開は確かにも“霧の中”という感じだ。中心人物のひとりは、ケガのために戦地フランスから戻ってきた米軍兵士・ジーン。婚約者・ペニーの叔父夫婦が住むアメリカの片田舎で暮らすようになった彼だが、その近所に潜伏する、「ノルマンディー上陸作戦」に関する機密文書をナチスへ渡そうとするスパイを見つけて片付けるという任務をひそかに受けていた。またペニーは、CIAの前身とされる諜報活動機関OSS(戦略情報局)で働く工作員。ここにひとくせもふたくせもあるカップルが出来あがるのだが、誰も信じられないような、ちょっとでも隙を見せると確実に出し抜かれるような状況の中で、それでもある程度は相手を信じるふりをして波風を立てずに社会生活を営んでいくあたりのセリフや動きは無類にスリリングだ。もうひとついえば、登場人物の声の調子、会話の抑揚は基本的に抑えられている。確かにこうした話題を明快に、よく通る声でしゃべったら、それこそ不自然だ。
1944年6月6日に行われた「ノルマンディー上陸作戦」については各自お調べいただくとして、このような緊迫したやりとりはいろんな地域で、いっそう想像を超えた形で行われていたのだろう。“枢軸国が戦争に勝つ”というセリフまで出てくるが、とにかく、オマハ・ビーチに米軍兵士が上陸したことで、ドイツ軍はビビる。本作は、その「どうビビらせていくか」に関わった、何パーセントかの者を描いた物語であると私は解釈した。戦争終結を早めたといわれる作戦のひとつを(結果として)握ることになり、図らずとも心理戦の最前線に放り込まれたジーンの悩み、葛藤、おじけを、じっくり味わいたいし、映画『プライベート・ライアン』と併せて視聴すれば興味深さはさらに増そう。監督はマイケル・デイ、ジーンにはジェイク・アベル、ペニーにはブリアナ・ヒルデブランドが扮する。
映画『FOG OF WAR 見えざる真実』
8月15日から全国公開
監督:マイケル・デイ
2025年/アメリカ/英語/103分/カラー/シネスコ/5.1ch/英題:FOG OF WAR/日本語字幕:大西公子/提供:スターキャット/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム/宣伝:ギグリーボックス
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