15歳のテニス・アカデミー生はなぜ沈黙するのか。コーチと生徒の関係に問題意識を投げかける。『ジュリーは沈黙したままで』

 大坂なおみがエグゼクティブ・プロデューサーを務める一作。ベルギーが生んだ気鋭レオナルド・ヴァン・デイル監督の長編第1作にあたり、第77回 カンヌ国際映画祭 批評家週間 SACD賞、第97回 アカデミー賞 国際長編映画賞ベルギー代表に選ばれた。

 ストーリーは相当にシリアスだ。主人公のジュリーは、大変なプレイの実力を持つ15歳のテニス・アカデミー生。ある日、彼女の担当コーチであるジェレミーが指導停止になったことを知る。これはつまりジェレミーが何かをしでかしたことを意味する。しかも、ジェレミーの教え子であるアリーヌは自ら命を絶っている。この因果関係は? やはりジェレミーに教わっていたジュリーに「取り調べ」の手が及ぶのはごく当たり前のことだが、彼女はベルギー・テニス協会の選抜入りテストを間近に控える身でもあった……。

 誰が悪いのか、何がきっかけで不幸な展開となったのか、などが「これだ!」と明確に示されることはなく、その点では、観る者が自分の持つ想像力を駆使する必要のある映画であるとも感じた。しかも私にとっては母国語ではないので、字幕を見て、行間から意味を感じ、「日本人の自分ならこうするが、ベルギーのひとたちはどうするのだろう」と考えながらの、体感時間のとても長い97分だ。ゆえに観終わった後のカタルシスは半端ではない。撮影には35mmと65mmフィルムが使われ、控えめながら効果的な音楽は2013年にピューリッツァー賞音楽賞を受賞したキャロライン・ショウが担当。ジュリーを演じるテッサ・ヴァン・デン・ブルックは12年のテニス歴を持つテニス選手である。

映画『ジュリーは沈黙したままで』

2025年10月3日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

監督:レオナルド・ヴァン・デイル
出演:テッサ・ヴァン・デン・ブルック、クレール・ボドソン、ピエール・ジェルヴェー、ローラン・カロンほか
2024|ベルギー・スウェーデン合作|オランダ語・フランス語・ドイツ語|100分|カラー|5.1ch|1.85:1|原題:Julie zwijgt | 日本語字幕:橋本裕充
配給:オデッサ・エンタテインメント
(C)2024, DE WERELDVREDE

公式サイト
https://odessa-e.co.jp/julie_keeps_quiet/