8月から広島、9月から呉で先行上映されていた一作が、10月24日から東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国公開される。監督の沖正人は『ある役者達の風景』で名を挙げた気鋭。この映画は監督が、生まれ故郷を舞台に、(おそらく相当な割合で)自分の人生を投影しながらつくりあげた内容である、という印象を受けた。

舞台となるのは瀬戸内海島嶼部に位置する広島県江田島市。主人公の修司(三浦貴大)はここで生まれ育ち、今もここにいる。数年前に家の畑で父親が突然死したこともある意味、彼をそこにとどまらせている理由のひとつなのかもしれない。ある日テレビを見ていたら、いまは東京で映画監督をしている和也(武田航平)が、江田島に戻ってきて映画を撮るというではないか。和也は修司の幼なじみであり、幸恵(咲妃みゆ)の彼氏でもあった。修二は幸恵に恋心を抱いていたから、何とも甘酸っぱい気持ちもある。そして“現在”の幸恵は呉市のスナックで働きながら、定期的に故郷に戻って母親の面倒を見ているが、私生活の方はというと、不倫にハマってしまい、なかなか太陽が差すようにはいかない。
3人とも、もうあの頃の3人でない。だがふたたび顔を合わせ、和也は映画の撮影をスタートさせる。わざわざ江田島にまで撮影に来たのはなぜか。その動機に亡き母が遺した「ある願い」があったことも、この映画に陰影を加えている。ぜひスクリーンでご確認いただきたい。監督作『みんな笑え』も記憶に新しい鈴木太一が、沖監督と共に脚本を担当しているのも話題になろう。
映画『やがて海になる』
8/29(金)より広島・八丁座、
9/5(金)より呉ポポロシアター先行公開
10/24(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
<キャスト・スタッフ>
三浦貴大 武田航平 咲妃みゆ
市村優汰 後藤陽向 川口真奈 ドロンズ石本 武田幸三 高山璃子
山口智恵 緒形敦 柳憂怜 藩飛礼・竜児 こばやしあきこ 伊沢弘 三浦マイルド
占部房子 白川和子 大谷亮介 渡辺哲
監督・脚本:沖正人
音楽:小山絵里奈 脚本:鈴木太一 撮影:彦坂みさき(JSC) 照明:金子秀樹 録音:庄司寿之
主題歌「おとなになったら」作詞・作曲◆ オニザワマシロ 超☆社会的サンダル(Perfect Music)
製作:ABILITY 制作プロダクション:KAZUMO 配給・宣伝:MAP 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2025/日本/カラー/92分/ビスタサイズ/5.1ch
(C)ABILITY