佐藤快磨監督の劇場長編デビュー作『泣く子はいねぇが』が、いよいよ11月20日に公開。「青春に終わりは来るのか……」

 青春に定年はないんだ、期限切れはないんだ、気持ち次第でいつだって新たなスタートをきれるんだ、と諭されるような気持になった。

 2014年『ガンバレとかうるせぇ』で、ぴあフィルムフェスティバル映画ファン賞(ぴあ映画生活賞)&観客賞をW受賞し、釜山国際映画祭など数多くの国内外映画祭で評価された佐藤快磨監督が、ついに劇場長編デビュー作『泣く子はいねぇが』を完成させた。故郷・秋田県の伝統行事「男鹿のナマハゲ」を縦軸に、“父親としての責任”“人としての道徳”を横軸に、約5年間の歳月を費やして脚本を執筆。練りに練ったストーリーテリング、機知に富んだ会話、ローカル色豊かな風景描写で楽しませる。

 主人公“たすく”に扮するのは、佐藤監督とは『壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ』以来、2度目のコラボとなる仲野太賀。父親になったばかりというのに、どうにも生きる足元が定まらず、酒癖も悪い。吉岡里帆ふんする妻“ことね”は、そんな夫にしっかりしてほしいと願うばかり。出産後の落ち着かない気持ちや夫への不安が口調や行動にあらわれてしまい、みけんにしわが寄る。

 ことねは「行かないで」と願ったものの、たすくは“なまはげの場”に向かう。「なまはげ存続の会」の会長(柳葉敏郎 扮する)に「どうしても」と誘われると断るわけにはいかないのだ。ただ、ベロベロに酔っていた。酒を飲みながら逡巡したのか。人前に現れたときには、たっぷりアルコールが入っていた。テレビカメラを前に「なまはげの意義」を語る会長のうしろを、奇声をあげながら暴れ回る全裸の男……。

 たすくは、いうなれば、「秋田の伝統文化」を、棒と玉と袋と毛と奇声でデストロイした。離婚し、逃げるように東京に行く。禁酒2年間。が、そこでばったり再会したのが同郷の友人・志波(寛 一郎 扮する)。彼から妻や子供の近況を聞いたとき、その先に見えるものは帰郷だけだった。果たして彼は妻や子供に「どのツラさげる」のか、親きょうだいとどう打ち解けあうのか、「なまはげ」とどう対峙するのか?

 個人的には、「あんな表情、役どころの吉岡里帆は今まで見たことがなかった」という感想も加えたい。

映画『泣く子はいねぇが』

11月20日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
<スタッフ>
監督・脚本・編集:佐藤快磨
製作幹事:バンダイナムコアーツ
制作プロダクション:AOI Pro.
企画協力:分福

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