理想の父に忍び寄る猟奇犯の影。21世紀のジュブナイル・サスペンスの傑作『クローブヒッチ・キラー』

 背中がひんやりするような作品だ。“マチズモの国”の持つダーク・サイドをばっちり見せてもらったという印象も受ける。

 主人公は16歳の少年。父親はボーイスカウトの団長で、手先が器用で家族を愛し決して激しく怒ったり暴力に訴えることなく、働き者で宗教活動にも熱心な愛国家で、周りからの信頼も厚い。少年はそんな父親に(ぼくの判断する限り)畏怖を感じ、だから反抗心などなく、父のボーイスカウトでも優秀な良い子としてそこにいる。やさしい人格者の父親、素直な息子という、ある意味、表面的には理想的な親子関係ではある。

 だが突如、それの崩れる時が来る。父は家とは別に小屋を持っていた。そこに足を踏み入れた息子は、猟奇的、変態的な写真や切り抜き、謎の地図などを見つけてしまう。それと同時並行的に、彼はある少女とも知り合う。彼女は、10年前の未解決事件「巻き結び連続殺人事件」に関心を抱いていた。調べるほど、息子には、その殺人鬼が父親ではないかと思えてきて、少女の協力を得て調査を進めていく。「あの偉大なお父さんがまさか」状態から、いくつものステップを経て、心をかき乱されながら、それでも目を閉じまいと毎日を生きていく息子。「父さんの言うことをきいて素直におとなしくしていればいいんだ」的な言葉から解放されたとき、彼はそこに何を見たか。息詰まるような110分である。

 タイトルに出てくる“クローブヒッチ”とは、ロープを芯に縛り付ける結び方(ヒッチ)のひとつ、巻き結びのこと。芯に対して、同じ向きのひと結びを二度施す結び方を示す。

 監督はダンカン・スキルズ、脚本はクリストファー・フォード。出演は『荒野にて』で第74回ヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞したチャーリー・プラマー、『ザ・シークレット・サービス』などに登場するベテランのディラン・マクダーモット、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でマンソン・ファミリーのケイティ役を演じたマディセン・ベイティ等。

 6月11日より東京・新宿武蔵野館、大阪・シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー。

映画『クローブヒッチ・キラー』

6月11日金より、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次ロードショー

監督:ダンカン・スキルズ 脚本:クリストファー・フォード 撮影:ルーク・マッコーブレー 配給:ブロードウェイ
【2018 年/アメリカ/ 111分 原題:The Clovehitch Killer】
(C)CLOVEHITCH FILM, LLC 2016 All Rights Reserved

出演:チャーリー・プラマー、ディラン・マクダーモット、マディセン・ベイティ、サマンサ・マシス

https://clovehitch-killer.net-broadway.com/