映画『ディナー・イン・アメリカ』。運命的な出会いは、どこに転がっているかわからない。だから人生、面白いのだ!

 なんて素敵なファンタジーだろう。犯罪、暴力、嘘などたくさんのリアルと、憧れ、未来などいくつかのポジティヴな要素がぶつかりあって、見たことのないような火花を散らす。

 主人公はふたりいる。内気な少女・パティは、古典的な宗教観にしばられた家庭で大切に育てられている。なにかと親が干渉してくるので、自分の気持ちであれこれ行動することもなかなかできないのだが、唯一、心が解放される瞬間を持っていて、それはパンク・ロックを聴くとき。なかでも“サイオプス”というバンドが好きで、そのリーダーを務める覆面男“ジョン・Q”に共鳴している。

 もう一人の主人公、サイモンは殆どの時を不機嫌な気分で過ごし、汚い言葉を吐き、数々の悪事を働いて、警察から逃げている。しかし彼には“サイオプス”のリーダー、“ジョン・Q”としての顔も持っていた。

 このふたりがいかに出会い、心を通わせていくか。いつ、どのようにしてサイモンと“ジョン・Q”が同一人物であることが判明するか。出会いによって、互いのマインドがどう変化していくのか。“ジョン・Q”の作風への影響はどうなのか。そのあたりが実に繊細に綴られていて、噴き出る血や攻撃的なロック・サウンドと、なんとも不思議な、しかし快いコントラストを描く。

 監督・脚本・編集のアダム・レーマイヤーは自身も音楽活動をするパンク・ロック・フリーク。彼が90年代に過ごしたネブラスカ州リンカーンでの日々を基に、当時のパンク・シーンにも愛を捧げた作品となっている。

 主演はミュージカル界でも活躍するエミリー・スケッグスと、『アメリカン・スナイパー』のカイル・ガルナー。『ズーランダー』や『LIFE!』のベン・スティラーがプロデューサーを務め、音楽は『ナポレオン・ダイナマイト』のジョン・スウィハートが担当。個人的には、およそパンクとは縁遠い“イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリー”の爽やかな歌声が、なかなか味の濃いシーンで使われているところにも感銘を受けた。

映画『ディナー・イン・アメリカ』

9月24日からヒューマントラスト渋谷、新宿武蔵野館、UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開

監督・脚本・編集:アダム・レーマイヤー
プロデューサー:ベン・スティラー、ニッキー・ウェインストック、ロス・プットマン
エグゼクティブプロデューサー:ステファン・ブラウム、ショーン・オグレー
音楽:ジョン・スウィハート
撮影:ジャン=フィリップ ・ベルニエ
出演:カイル・ガルナー、エミリー・スケッグス、グリフィン・グラックパット・ヒーリー、メアリー・リン・ライスカブ、リー・トンプソン
配給:ハーク
配給協力: EACH TIME
【2020 年/アメリカ/英語/ 106 分/カラー/ 5.1ch /シネマスコープ/原題 Dinner in America /字幕翻訳:本庄由香里 】
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