元・さくら学院のふたりが織りなす刹那の世界。『さよならくちびる』の塩田明彦監督、入魂の最新作『麻希のいる世界』

 塩田明彦監督のクリエイター魂がひしひしと伝わる作品だ。主演は新谷ゆづみ(由希役)、日髙麻鈴(麻希役)。彼女たちは、小松菜奈と門脇麦がシンガー・ソングライター・デュオ“ハルレオ”を演じた『さよならくちびる』(2019年)に、そのファンとして登場していた。こんどはそのふたりを主役とすべく、オリジナル脚本を書き、この映画が完成したのである。

 麻希は幼少の頃からのとある事情もあってか、非常にクセのある性格。由希は重い持病を患って久しい。麻希の歌や曲作りのセンスには天才的なものがあり、由希はバンド結成を持ちかける。その前後からの麻希に対する行動、麻希の音楽世界に対する由希の思い入れの強さは、もう、相当な執着に基づく愛と言っていいほどだ。やはり音楽に精通する祐介役の窪塚愛流は、ふたりを引き離そうとしつつも(理由はぜひ映画をご覧ください)、麻希の才能を認め、音楽を共につくりあげる方向に進む。が、天才という存在は決して周りを幸福にはするものではないのかもしれない。

 麻希が劇中でプレイする“オリジナル曲”は、妙に幻想的であるし、霧が一気に晴れるかのようなラストの展開がやけに切ない。劇中歌は向井秀徳が担当。1月29日より渋谷ユーロスペース、新宿武蔵野館ほか全国公開される。

映画『麻希のいる世界』

2022年1月29日(土)より渋谷ユーロスペース、新宿武蔵野館ほかにて公開
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