本国公開から11年を経てようやく日本で劇場公開される『アウェイデイズ』。70年代後半、英国の若者たちの凶暴なる青春譚

本国公開から11年を経てようやく日本で劇場公開される『アウェイデイズ』。70年代後半、英国の若者たちの凶暴なる青春譚

 ポスターを見ると“サウンドトラック担当”のところに、ジョイ・ディヴィジョン、ウルトラヴォックス、エコー・アンド・ザ・バニーメン、ザ・キュアーなどの名前が載り、本編ではさらにキャバレー・ヴォルテール(ばんざい!)やスティーライ・スパンの楽曲も挿入されるのだから、すっかり嬉しくなる。それだけで頭の中に、(現地に行ったこともないのに)1970年代後半の、あの、英国のうっそうとした曇り空を思い浮かべるのは自分だけではないはずだとも思う。

 原作はケヴィン・サンプソン著の同名小説だ。2009年に英国公開された映画が、10数年の時を超えて、ついに日本の劇場にかかるようになった。新作もヴィンテージものもいいけれど、こういう「なぜかこの国で封切られなかった作品」がふと差し出されるのもひじょうにありがたい。1979年、イングランド北西部マージ―再度州バーケンヘッドを舞台に、“エコバニ”のライブで出会ったカーティとエルヴィスが繰り広げる、青春というにはかなりくすんだ、さえない、痛々しくもある物語。だがその痛々しさがやけにリアルで、個人的には感情移入せずにはいられないのだ。

 エルヴィスはギャング集団“バック”のひとり。チンピラなのだがボスは6人の子を持つ大人で妙な統制がとれている。カーティは、以前からその軍団に入りたいと憧れていたので、エルヴィスとの出会いは願ったりかなったりだった。そしてエルヴィスも暴力以外の、たとえば芸術や音楽について語り合い、価値を共有できる仲間を求めていたから、カーティとの出会いは願ったりかなったりだった。一緒にレコード店に行ってデヴィッド・ボウイのブートレグを買うシーンなど音楽ファンとして微笑まずにはいられなかったけれど、万事うまくいくわけがなく、いつしかドラッグ、レイプ、殺人などの要素が入り込み……レイプをした男に、しっかり罰がくだるところには、「これが当たり前の人間社会というものだ」との思いを強くする。目から涙、皮膚から血がほぼ並行して一筋に下降するシーンは、映画を見終わって家に帰っても、ぼくの頭の中にこだましつづけた。

 葬儀のシーンで歌われる音楽は、古い讃美歌の「アバイド・ウィズ・ミー」。ブルース・リー主演映画『ドラゴン怒りの鉄拳』の葬儀のシーンではブラスバンドが演奏し、セロニアス・モンクの名盤『モンクス・ミュージック』の1曲目にも収録されていたナンバーだ。世の中には何兆もの“歌”があるとはいえ、ブルース・リー、セロニアス・モンク、そしてイギリス映画に共通して取り上げられている楽曲など、ほかに存在しないのではないか。

 英国フットボール発祥の文化“Football Casuals”(カジュアルズ)にスポットを当てた映画ということも、この作品の価値を増している。しかしフットボールの試合場面が映らず、観客の熱狂でつないでいく。そのあたり、先日公開されて好評の日本映画『アルプススタンドのはしの方』を思い出す。

映画『アウェイデイズ』

10/16(金)より新宿シネマカリテほかにてロードショー! 以降、全国順次公開!
10/30(金)より|大阪・シネマート心斎橋

プロデューサー:デヴィッド・A・ヒューズ
監督:パット・ホールデン 脚本:ケヴィン・サンプソン(原作「AWAYDAYS」ケヴィン・サンプソン著)

出演:ニッキー・ベル、リアム・ボイル、スティーブン・グレアム、イアン・プレストン・デイビーズ、ホリデイ・グレインジャー、サシャ・パーキンソン、オリヴァー・リー、ショーン・ワード、マイケル・ライアン、リー・バトル、レベッカ・アトキンソン、ダニエレ・マローン、デヴィッド・バーロウ、アンソニー・ボロウズ 他

原題:AWAYDAYS|2009年|イギリス|105分|カラー|ビスタ|5.1ch|DCP|R18+
本国公開2009年5月22日|日本語字幕:額賀深雪|日本語字幕監修:イノベヒロキ/LRF 宣伝:VALERIA|配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)Copyright RED UNION FILMS 2008

公式HP:https://awaydays-film.com/
公式twitter:https://twitter.com/awaydays_film
公式facebook:https://www.facebook.com/awaydays.film.japan/

エンタメカテゴリの最新記事