R・J・パラシオ原作のベストセラー小説シリーズ「ワンダー」(『ワンダー 君は太陽』として映画化)のアナザーストーリーとして生まれた一作であるという。始まりは、現代のニューヨークの、なかなかに裕福そうな児童が通っているであろう学校の風景。そこの生徒であった少年ジュリアンが、パリからやってきた祖母と会話を交わす。このジュリアンは、「ワンダー」の中で、「オギー」をあざけっていた人物だ。「オギー」は外見が原因で不本意な扱いを受けており、ジュリアンは彼に「苦しみを与えていた」。ゆえに退学処分を受けた。
が、「孫と祖母の会話」は、あくまでも導入部。そこから大きく時代がさかのぼって、祖母の回想録へと突入する。場所はパリ、時代は1942年、ドイツ軍によるパリ占領/フランス降伏の頃だ。「(すでに親を殺されていた)ユダヤ人少女」と「ハンディキャップを持つ少年」が、ともに、人種弾圧や優生思想の空気が蔓延していたであろうなか、いつ軍に殺されたり、虐待されたり、収容所送りになるかもしれないという恐怖におびえつつ、それでも、ときに微笑むことも忘れずに生きていく。
詳細は「観ればわかる」そのものだと思うが、後半、高名なジャズ・サックス奏者、レスター・ヤングのレコードにあわせて人々がダンスをするシーンには「この場面でこう来たか」と唸るしかなかった。ジャズもダンスも命がけだった時代、それでもスウィングせずにいられなかった者がいる。曲名が「サムタイムズ・アイム・ハッピー」であるのも、意味が深い。
監督はマーク・フォースター、出演はヘレン・ミレン、アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ジリアン・アンダーソン等。
映画『ホワイトバード はじまりのワンダー』
12月6日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー公開
監督:マーク・フォースター
脚本:マーク・ボムバック、R.J.パラシオ
出演:アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ブライス・ガイザー、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレン
2024年|アメリカ|英語・仏語|121分|カラー|スコープ|5.1ch|原題:White Bird|字幕翻訳:稲田嵯裕里|映倫区分:G
配給:キノフィルムズ
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