「このミステリーがすごい!」の2002年版海外編で第1位を獲得したベストセラーを、名匠ニック・カサヴェテスが鮮やかに映画化。『神は銃弾』

 平和な日々が、突如失われることへの疑問、虚無感、怒り、戸惑い、さまざまなものが映し出される。だが、それでも主人公は前を向き続ける。

 主人公は、ボブ・ハイタワーという刑事。元妻とその再婚相手が惨殺され、さらに幼い愛娘が失踪した。ここで往年の映画なら「相手が誰か」と長々と引っ張っていくところかもしれないが、これは現代の映画であり、ボブの職業柄もあって、何が背後にあるのかはかなり歯切れよく判明する。裏でカルト集団の力が働いていたのだ。

 娘を取り戻すために、どう動けばいいのか。もちろんその場合は、生きていて健康であることが前提だ。同じころ、ボブはカルトに誘拐されたものの生還を果たしたケースという名の女性と知り合う。ボブは刑事だが、警察の力では及ばない領域があることを知っている。彼は職を投げ出し、ひとりの父として娘を助けることを決意する。そしてケースも、あえて再び「カルト」に浸ることを決める。もう思い出したくもないであろうカルトの世界にまた入っていこうと思ったのは、それほどボブの娘助けに関する熱意に打たれたからなのであろう。

 ボブ&ケースのふたりvs巨大で謎めいたカルト勢力。見るだけで痛みが伝わってきそうなシーンや、血が噴き出るシーンもあるのだが、そうした展開もストーリーを考えればちっとも不思議ではない。そして娘を取り戻すには、尋常ではない歳月を必要とする。その間にも毎日毎日、誰もが年をとっていくのだ。ボブのまぶたにあるのは「幼かった頃の娘」まで。だが、生きている限り「幼いままでいられるひと」などいない。

 原作は、「このミステリーがすごい!」2002年版海外編で第1位を獲得したボストン・テランの『神は銃弾』。監督・脚本はニック・カサヴェテス。初期ボブ・ディランの楽曲など、挿入されている音楽も、物語と照らし合わせると「なるほど」という感じだ。160分越えの大作なので、前後の時間に余裕を確保したうえでじっくり味わいたい。

映画『神は銃弾』

12月27日(金) 新宿バルト9 ほか 全国ロードショー

監督・脚本:ニック・カサヴェテス
原作:ボストン・テラン「神は銃弾」(文春文庫)
音楽:アーロン・ジグマン
編集:ベラ・エリクソン
出演:ニコライ・コスター=ワルドー、マイカ・モンロー、ジェイミー・フォックス、カール・グルスマン、ジャニュアリー・ジョーンズ、ポール・ヨハンセン、ブレンダン・セクストン三世、ギャレット・ウェアリング
2023年|アメリカ|英語|156分|カラー|シネマスコープ|5.1ch|原題:GOD IS A BULLET|字幕翻訳:平井かおり|レイティング:R15+
配給:クロックワークス
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