連載開始から約30年、累計発行部数3000万部を記録しているという国民的マンガ「サラリーマン金太郎」(原作:本宮ひろ志)が、本当に久々に実写版となった。主人公の矢島金太郎にはこれまで高橋克典や永井大が扮してきたが、三代目を務めるのは鈴木伸之。しかも今回は1月10日に『【暁】編』、2月7日に『【魁】編』と、2作の公開である。
元ヤンの熱血漢、そのオープンな生き方はあまりも率直すぎるためか、当初こそ一部の人の間で「なんだこれは?」的な視線を浴びるのだが、やがてそうした人間の冷たい心をも溶かしてしまう心の大きさが金太郎にはある。しまいには女性も男性も、彼の魅力にひきつけられていく。だが、人の足元を見ない、相手がどんなステイタスであろうと同じ人間として接する金太郎の姿勢が、果たして今の、コンプライアンスがギチギチで、忖度のうまい者がセコク得をするような時代にどこまで「映えて」いけるのか? その疑問に応えつつ、あざやかに新時代の金太郎を示したのが、今回上映される2作品といえよう。
鈴木伸之が恵まれた身体能力を発揮するシーンもたっぷりあるし、「ずるい奴」は本当にずるく描かれているのは製作スタッフのセンスと俳優の演技力のたまものだろう。でもその「ずるい奴」だって、最初からずるかったわけではない。金太郎がその「初心」を、やつらに思い出させていく過程も含め、じっくり見入ってほしい二作品である。共演者も実に豪華だが、とりわけ中村加代役の浅野温子がかっこいい。
映画『サラリーマン金太郎』
【暁】編 1月10日公開
【魁】編 2月7日公開
原作:「サラリーマン金太郎」本宮ひろ志(集英社刊)
監督:下山天
脚本:田中眞一
配給:ライツキューブ ティ・ジョイ
(C)本宮ひろ志/集英社(C)2025映画『サラリーマン金太郎』製作委員会