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映画

  • 2024年4月26日

あくまでもスタイリッシュに、だが燃えるところは燃える。2024年の「熱血バスケ」が描かれる。『リバウンド』

 努力・青春・勝利といった言葉が似合う一作だ。ちょっと斜に構えて観始めたとしてもそのうち、登場人物たちの、まっすぐな、自分の可能性をただ信じるのみな言動に、心の奥が熱くなっていくはずだ。  ストーリーも、実にストレートである。高校の、弱くて弱くて廃部寸前のバスケットボール部に、ヤンという男がコーチと […]

  • 2024年4月24日

言葉を失う「現実の風景」の数々。第96回アカデミー賞 長編ドキュメンタリー賞受賞作品『マリウポリの20日間』

 胸が痛くなる。しかもこの映画に描かれているのは、「やりあい」ではなく、「一方的な攻撃」だ。2022年2月、ロシアによるウクライナ東部マリウポリへの進攻――――つい数十秒前まで普通に存在していた建物がたったいま爆破され、爆風が吹き、破片が飛び散り、爆音が耳をつんざく。おそらく「なぜ私たちが?」と思う […]

  • 2024年4月24日

どうしてこんなことが? 「良心」とは何なのか? イタリアを揺るがした歴史的事件を映画化。『エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命』

 重厚な作品だ。観終わったあと、深く内省することになると思うので、これを観た日はその後の予定をあまり入れないほうがいいかもしれない。イタリア語タイトルは『Rapito』、TIFFでは『KIDNAPPED』というタイトルで上映された。両方とも、「誘拐」を意味する。  スピルバーグ監督が映画化を断念した […]

  • 2024年4月13日

尼崎を舞台に、関西出身の豪華キャストが集結した「想定外のホームコメディ」。『あまろっく』

 “尼崎を舞台に、39歳の独身女性、65歳の能天気な父、20歳の父の再婚相手の「想定外の共同生活」を描くホームコメディ”という状況説明だけでも好奇心が高まるが、キャスティングがまた、思い切っていて驚かせる。主演は江口のりこと中条あやみ、そして笑福亭鶴瓶が実にいい味を出す。つまり独身女性を江口、能天気 […]

  • 2024年4月12日

コロナ禍の高級クラブの苦労を映像化。映画『ル・ジャルダンへようこそ』の製作発表会見が行なわれた

 映画『ル・ジャルダンへようこそ』は、銀座の高級クラブ「ル・ジャルダン」のオーナーママ望月明美が新潮社から同タイトルの書籍を出版し、好評な売れ行きでシリーズ第3弾まで発売されている本をベースにした映画。  実店舗のクラブでの撮影も行ない、映画撮影が終盤を迎えたので、製作発表会見を4月10日・グレース […]

  • 2024年4月11日

「外は謎の闇」、極限の状況に置かれた人間がとった行動とは? 強烈な印象を残すSFシチュエーション・スリラー『ザ・タワー』

 一瞬で壊れる日常のもろさ、その後の言動によってあぶりだされる各人の品性。観た後も深い余韻を残すとともに、「こうなった場合、自分はどう行動するだろう。ここまで生き残ることに執着できるだろうか」と自問自答せずにはいられない一作がこの『ザ・タワー』である。  物語の舞台は、フランスのとある団地。団地の住 […]

  • 2024年4月5日

母の過剰な思いは愛なのか、暴力なのか? 娘の心の闇を描くミステリー『毒親<ドクチン>』

 自分もすっかり、たとえば小学生や中学生の頃に習っていた先生がたの当時の年齢よりもかなり年上になってしまった。子供心に「イモだな」という教師は結構いて、たぶんその印象は正しかったのだろうとは思うが、暴力をふるう教師は論外として、「あなたのためを思って」みたいな恩着せがましい口調で説教したり、偉そうに […]

  • 2024年4月4日

400年受け継がれる唐紙文様を起点に、「あるがままの自然」を探求する。『フィシスの波文』

 まったく馴染みのない分野だったこともあり、実に興味深く拝見した。少なくとも私は、今の今まで、「文様」に関して考えたことはなかった。  この映画は、さまざまな「文様」に焦点をあてたドキュメンタリー作品である。400年ものあいだ、和紙に文様を手摺りするテクニックを受け継いできたという京都の工房での取材 […]

  • 2024年3月29日

許せないことに立ち上がった人々の雄姿。ヴェネツィア国際映画祭最高賞(金獅子賞)受賞作品『美と殺戮のすべて』

 なんとも想像力をかきたてられるタイトルだが、視聴時間が進むにつれて、「ああなるほど」と合点がいく。物語の軸となるのは、ニューヨークのゲイカルチャーやパンク~ニュー・ウェイヴ・シーンともかかわりを持つ写真家のナン・ゴールディン。もうひとつの軸は、「オピオイド鎮痛薬」の一種であり、全米で50万人以上が […]

  • 2024年3月28日

今をときめくフランスのパティシエ、ヤジッド本人が監修に携わった“サクセス・ストーリー”『パリ・ブレスト ~夢をかなえたスイーツ~』

 ルイ・ヴィトンなどともコラボレートするフランスの現役パティシエ、ヤジッド・イシュムラエン(先ごろ来日して辻口博啓とのトークイベントを開催した)のサクセス・ストーリーを基にした一作。映画の役名もヤジッドという。かなりギスギスした環境の中で育たざるを得ず、法に触れることもしてしまうのだが、そんな彼にと […]