もし戦争になったら、外国人の友人と戦えますか? 寺山没後40年、改めて彼のヴィジョンを問う『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』

 2月11日が「建国記念日」(「建国記念の日」)という国民の祝日になったのは1967年である。初めてのそれが施行される2日前にあたる67年2月9日、劇作家の寺山修司が構成を担当したドキュメンタリー番組『日の丸』がTBSテレビで放送された。

 テープレコーダーをぶらさげて、マイクを片手に持った女性インタビュアーが待ちゆく人をつかまえて、「日の丸の赤は何を意味していますか?」、「家族と国のどちらが大事ですか」、「あなたにガイジン(※まだ外国人と言い換えられていない)の友達はいますか?」、「もし戦争になったらその人と戦えますか?」のような質問を、機械のように、立て続けにしていく。この番組は大いに話題を呼んだが、政治家などには問題視する向きもあり、郵政省電波管理局の調査の手がTBSに入ったようだ。

 それはさておき、個人的に最も価値ある発見だったのは、『日の丸』の前にプロトタイプ的な番組『あなたへ…』が放送されていた事実(もちろん寺山が構成)を知れたこと、そのときのインタビュアー(村木眞寿美。『日の丸』とは異なる)が健在で、取材に応えている姿を見られたことだ。寺山に師事した安藤紘平の話も説得力があるし、寺山の生前の映像が挿入されているのも価値を高めている。没後40年、あらためて感じたのは寺山修司の存在の大きさだ。彼がドキュメンタリー番組制作時に放ったという「情念の反動化への挑戦」という言葉については、こちらの頭脳が理解あぐねるとしても。

 監督は、T新人研修で『日の丸』を観て衝撃を受けたというTBS社員の佐井大紀。2月24日から全国ロードショー。

映画『日の丸~寺山修司40年目の挑発~』

2月24日(金) 角川シネマ有楽町、ユーロスペース、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

監督:佐井大紀 製作:米田浩一郎、安倍純子 企画・エグゼクティブプロデューサー:大久保竜 チーフプロデューサー:松原由昌 プロデューサー:森嶋正也、樋江井彰敏、津村有紀 総合プロデューサー:秋山浩之、小池博 TBS DOCS事務局:富岡裕一 協力プロデューサー:石山成人、塩沢葉子

出演:高木史子、シュミット村木眞寿美、金子怜史、安藤紘平、今野勉 語り:堀井美香、喜入友浩(TBSアナウンサー)

2023年/日本/87分/5.1ch/16:9 製作:TBSテレビ 配給:KADOKAWA
(C)TBSテレビ

公式サイト
https://hinomaru-movie.com/