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原田和典

  • 2024年9月1日

香港民主化運動から5年。故郷と母から離れることと引き換えに、若手監督が世に問う力作『香港 裏切られた約束』

 原題は『因為愛所以革命』。香港民主化運動を、鮮明な映像と音響で捉えたドキュメンタリー作品だ。監督のトウィンクル・ンアン(顔志昇)はパティシエだったが、2019年6月から、香港民主化運動の記録を一眼タイプのビデオカメラで撮影し始めた。が、その記録・編集・作品化を香港でしていては命の危険が伴う。そこで […]

  • 2024年8月30日

1970年代に制作された、いかれた3作品をピックアップ。全作日本初公開! 『ホラー秘宝まつり 2024』開幕

 「まったく、どうかしているぜ」と、ふと声が漏れてしまうこと間違いなしのラインナップといっていいだろう。夏の締めくくりに咲き乱れる恒例の「ホラー秘宝まつり」、その2024年版が8月30日から公開される。なんと全作とも日本初公開。アナログならではの、いや、アナログだからこそのraw感、そして手作り感、 […]

  • 2024年8月30日

祖国への誇りを胸に行われた命がけのレース。実話を基にした必見の一作『ボストン1947』

 「学び」を与えてくれる作品だ。私は陸上の歴史について人生で一度も考えたことがなく、この映画のモチーフになっている物事についても存じあげなかった。もちろん、1936年にベルリンオリンピックが行われていたことは知識として持っていたし、記録とファンタジーをブレンドしたような、なんとも独特の味わいを持つリ […]

  • 2024年8月24日

カンフーの達人の「姉愛」が爆発する痛快アクション作『ポライト・ソサエティ』

 大好きな姉とダメ男との結婚を阻止することに生命をかけた高校生の妹が主役の物語、といえばいいだろうか。妹はとにかく姉が大好き、だが相当に冷静に姉のことを見ている。だから姉がダメ男に夢中になっているのが許せない。だが姉はそれに気づかず恋に燃えている。まわりが見えない。それにそのダメ男はそんな姉の性質を […]

  • 2024年8月16日

“Kホラーの巨匠”の新境地。豪華メンバー登場のサスペンス・スリラー『ニューノーマル』

 第26回富川国際ファンタスティック映画祭ではわずか10秒で完売、ファンタジア国際映画祭では「独創的でカリスマ的なエネルギーで観客を魅了する新ジャンル映画」として称賛された一作が日本上映される。“Kホラーの巨匠”こと、チョン・ボムシク監督の最新作だ。  一本の映画ではあるが、内容はオムニバス的な色彩 […]

  • 2024年8月14日

あのレストランにダリは食べに来るのか? 「もしも」の面白さを感じさせてくれる大胆不敵な一作『美食家ダリのレストラン』

 世紀の奇才、サルバドール・ダリの生誕120年・没後25年にふさわしい上映だ。英語タイトルは「Waiting for Dali」という。  では、誰が、何の目的でダリを待っているのか。待っているのは、大のダリ好きであるジュールズという男。レストラン「シュルレアル」のオーナーで、いつかこの芸術家に自分 […]

  • 2024年8月2日

是枝裕和監督の長編映画デビュー作品『幻の光』が、「能登半島地震 輪島支援」として特別上映

 1995年に公開された一作がデジタルリマスターされて、あらためて劇場上映される。きっかけは、今年の元日に起きた能登半島地震だ。  この映画は石川県輪島市の協力を得て完成した。そして劇中には輪島の風景がしっかりと捉えられている。合津直枝プロデューサーは「今こそ映画を通して輪島市に恩返しを」とリバイバ […]

  • 2024年7月25日

不器用な大人の、心温まる物語。デイジー・リドリーが主演とプロデュース。『時々、私は考える』

 『スター・ウォーズ』シリーズのレイ役でおなじみの、デイジー・リドリーが持つ別の一面が楽しめる一作。彼女自身が主演・プロデュースを務め、監督にはレイチェル・ランバート(2023年インディワイヤー誌が発表した、注目の女性監督28人のひとり)が起用された。レイチェルの長編作品が日本公開されるのは今回が初 […]

  • 2024年7月25日

もう我慢できない! セクハラ、パワハラを受けた女性ふたりの悪夢を描く力作スリラー『ロイヤルホテル』

 おぞましい一作と言っていいだろう。ミソジニー・オブ・ザ・ワールド、あるいはマチズモ・オン・ザ・ランといった感じだ。それに、「ロイヤル」(高貴)な「ホテル」など、どこにも出てこない。  ハンナとリブは親友同士。旅行で訪れたオーストラリアで金欠となり、ひとまずバーテンダーとして小金を得ようということに […]

  • 2024年7月24日

第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品。孤独な男ふたりの運命を描くクライムドラマ『このろくでもない世界で』

 気鋭たちの才気が結集した一本だ。監督・脚本のキム・チャンフンはこれが初長編監督作品。生計のためにモーテルでアルバイトをしながら、受付のカウンターでこの物語を執筆したという。継父からの暴力と貧困にあえぐ少年ヨンギュに扮したのは、これが映画初主演となる1997年生まれのホン・サビン。ヨンギュの義妹・ハ […]