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原田和典

  • 2025年6月28日

抜き差しならないニューヨークの救急医療現場、その「リアル」に迫るスリラー作品。『アスファルト・シティ』

 ニューヨークで奮闘する救急救命隊員の物語を約2時間にわたって描く。ニューヨークにはティファニーとか5番街とか、とてもきらびやかな場所もあるけれど、この救急隊員が勤務しているのはハーレムというエリア。あなたが命がけのブラック・ミュージックやラテン・ミュージックのファンでもない限り、あえて観光に行く地 […]

  • 2025年6月19日

19歳未満鑑賞禁止にもかかわらず観客動員数100万人突破。心に刺さるサスペンス・スリラー、『秘顔-ひがん-』

 意表を突きまくりながらも非常にスムーズに流れゆく展開、何回ものどんでん返しがちっとも奇異に感じられない流れ、「現在」の痕跡をどこかに残しつつも徐々に物語の展示を過去へとさかのぼらせてゆくうまさ。ストーリーテリングの面白さ、「今、ここを映してほしいんだ」を直撃するようなツボを得たカメラ・ワークに唸ら […]

  • 2025年6月14日

祖母、子、孫の三世代が織りなす、笑えて泣ける家族の物語。タイの美しい風景もたっぷり。『おばあちゃんと僕の約束』

 「人情のありがたみ」や「血の争えなさ」を、エンタテインメント性たっぷりの描写の中から再認識させてくれる作品といえばいいか。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』が今も語り草のスタジオGDHが送る一作だ。本国タイでは2024年4月に公開され、年間最大のオープニング成績を記録。若者を中心に大流行し、世 […]

  • 2025年6月13日

ニューヨークの厨房は「世界の縮図」だった。名作戯曲を、圧巻のノーカット長時間収録も含みながら映画化。『ラ・コシーナ/厨房』

 ニューヨークの、およそ半ブロックほどはありそうな規模を持つ大型レストラン「ザ・グリル」を舞台にした物語。定冠詞“ザ”には「ほかのものとは違う(ほかと比べてくれるな)」というようなニュアンスがあるはずだから、経営陣も、働く者も、相当な気概と覚悟を持っていてもおかしくはない。原作はイギリスの劇作家アー […]

  • 2025年6月9日

東京国際映画祭の上映時、「涙が止まらない」との声も。ある教師の少年時代の記憶を辿る一作、『年少日記』

 教育の現場は難しい。子供たちは当然ながら子供であり、教師たちは成人だ。成人にとっては既に通ってきた道であっても、子供たちにとっては初めて通る道であり、時にそれは命を懸けた大冒険となる。といってもこの映画は「子供と大人」の話ではない。主人公のチェンは高校の教師だ。つまり「大人への脱皮をはかろうとして […]

  • 2025年6月7日

数々の、男と女の愛の物語が広がる。監督の没後3年に合わせた特別企画。『石井隆 Returns』

 海外でも評価が高まる石井隆監督。その没後3年に合わせて、6月6日からシネマート新宿、池袋HUMAXシネマズで初期作品の特集上映「石井隆 Returns」が行われる。これまで複雑な権利関係により、まとめて上映される機会が少なかった4作品の、HDリマスター版による初上映だ。作品は、次の4点。 ●『死ん […]

  • 2025年6月6日

A24×タイ・ウェスト×ミア・ゴスによるホラー三部作の完結編、『MaXXXine マキシーン』

 監督・脚本はタイ・ウェスト、主演はミア・ゴス。それだけでも不穏な空気が漂う。一筋縄ではいかない、時に背筋のゾッとする世界が約2時間、保証されるといっていい。  『X エックス』や『Pearl パール』が評判となった両者のコラボだが、今回は『X エックス』に登場したキャラクター、マキシーンをさらに掘 […]

  • 2025年6月4日

上級国民の優雅な趣味は、「人間狩り」であった―――要注目の「不快な一作」。『我来たり、我見たり、我勝利せり』

 億万長者・マイナート家の物語。この家にはとにかくカネがある。莫大な土地に城のような家を建て、使用人がうじゃうじゃいる中で、毎日の生活を送っている。まわりがヘコヘコして、こちらが何か妙なことをしても、勝手に責任をとってくれる。政治家とも癒着しまくり。世界が自分のために回っている感覚なのだろう。当然、 […]

  • 2025年6月4日

『ブルックリン』のクローリー監督が、時間軸を交差させてディープな愛を描く。『We Live in Time この時を生きて』

 いいタイトルだ。ひとの生命も世の中も永遠ではない。だからその時を大切に生きる。あわただしい毎日の中でふと忘れてしまいがちになることを、この映画はやさしく教えてくれる。  主人公は若手一流シェフのアルムートと、離婚してから冴えない日々を送るトビアス(劇中での発音はトバイアス)。二人の10年間がモチー […]

  • 2025年6月3日

マストロヤンニ晩年の傑作。日本初公開から37年の歳月を経て、4K修復ロングバージョンで上映。『黒い瞳 4K修復ロングバージョン』

 原作者アントン・チェーホフの没後120年、主演俳優マルチェロ・マストロヤンニの生誕100年を記念して、『黒い瞳』が4K修復ロングバージョンとして劇場公開される。トータル約25分間のシーンがオリジナル版に追加されているという。  私はオリジナル版に接することのないまま今に至ってしまったので比較対象は […]