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クロックワークス

  • 2023年10月13日

「自分中心世界」「あくなき承認欲求」を希求した末に、彼女が体験したものとは? 『シック・オブ・マイセルフ』公開

 ものすごい作品だ。どこをどうすればこんな性格の主人公に生まれ育つのだろう。「ノルウェーのアカデミー賞」ことアマンダ賞では5部門にノミネートされ、2022年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門にも出展された話題作。この「視点」はとんでもないと、おののきながら見入った。  主人公・シグネはいうなれば、承認 […]

  • 2023年5月12日

フリークスvs鍵十字。自由と多様性が屈することは、決してない! 映画『フリークスアウト』

 異色作『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の監督、ガブリエーレ・マイネッティが遂に新作を発表した。ヴェネツィア国際映画祭でコンペティション部門に選出され、ロッテルダム国際映画祭で観客賞、アカデミー賞で6部門を受賞した話題作『フリークスアウト』が5月12日から全国公開される。  私は『皆はこう呼んだ、鋼鉄 […]

  • 2023年5月4日

4つの都会を舞台に、一人の女性の「あり得たかもしれない人生」を描く話題作『ジュリア(s)』

 人生は偶然の集積なのかもしれない。あのとき、あの人に出会っていなかったら。もしもあの電車ではなく、次の電車に乗っていたら。なにがきっかけで、どう変わるかわからないのが人生だ。  5月5日から全国公開される『ジュリア(s)』は、そんな“生の真理”(せいのしんり)的なものを、ユニークな手法で描き出す一 […]

  • 2023年4月18日

その道化師たちに気をつけろ! オーバーツーリズムへの警鐘にもなる、手加減なしの殺戮エンタテインメント『ベネシアフレニア』

 この監督も脚本家も皆、心に狂気を飼っているのではないか。何がどうなったら、ここまでの恐ろしさを映画中に横溢させることができるのか。なんたるチームを組んだのだ、と思ったら、アレックス・デ・ラ・イグレシアがひとりで監督も脚本も(こちらはホルヘ・ゲリカエチェバァリアと合同)で手掛けていたのだった。クエン […]

  • 2023年3月23日

ニコラス・ケイジの人生とダブる、好漢“ニック・ケイジ”の活躍に注目。『マッシブ・タレント』公開

 ニコラス・ケイジが自分を素材に遊んでしまった……そんな趣を持つ軽妙な一作だ。彼が扮するのは往年のハリウッドスター、“ニック・ケイジ”。最近はどうにも冴えなくて、借金もふくらむばかり。妻とは別れ、娘の視線も冷たい。そんな彼の許に、なんとも怪しい、しかしおいしい話が舞い込む。スペインの大富豪のパーティ […]

  • 2022年12月20日

トップ女性ニュースキャスターが「恐怖」の淵に沈む。なぜ!?

 今週末より公開される『死を告げる女』は、ホラーとミステリーの要素が、韓国の最先端の空気の中で溶け合った作品という印象を受けた。監督・脚本のチョン・ジヨンはソウル独立映画祭特別賞受賞作品で、ベルリン国際映画祭でも上映された『春に咲く』で評価を決定づけた人物。今回の作品は「端正で知的で美しい――世間か […]

  • 2022年11月2日

「クライム・サスペンス」でもあり、「バディもの」でもあり。いまどき、珍しいほどの「男くささ」に引き込まれる『警官の血』

 じっとりとした、重く湿っぽいほどの手応えを感じさせる「サスペンス」であり、さわやかなまでに「バディもの」だ。もちろん基本的にはクライム・サスペンスなので「真の悪者さがし」に関心が向かいがちになってしまうけれど、それにこだわりすぎると木ばかり見て森を見ないことになってしまう。認め合う男の美しさもまた […]

  • 2022年7月5日

「恋をせずに交際しましょう」、そう割り切ってデートアプリで出会ったふたりの行く先は? 『恋愛の抜けたロマンス』公開

 英語タイトルは『Nothing Serious』。(心配するひとに)大したことない、もう大丈夫と言うような意味だ。  男女間の生々しい描写と、平成初期の日本の人気ドラマにも通じるトレンディ風味が絶妙にバランスして、なんとも「にくめない」作品に仕上がっている。一度や二度、つらい恋を通過したひとなら、 […]

  • 2022年6月21日

“恋愛職人”の異名をとる人気俳優ヨン・ウジンが、命がけで愛に溺れてゆく青年軍人に扮する話題作『愛に奉仕せよ』

 禁断の恋を描いた作品である。ここで読者のあなたに、ひとつ空想していただきたい。  あなたは真面目な軍人だ。すでに家庭を持っていて、優しくて素朴な妻と可愛い娘がいる。だが真面目すぎるがゆえか、軍人としてはいまひとつ出世できない。そこに師団長から声がかかった。文字通りの昇進のチャンスであり、その暁には […]

  • 2022年6月1日

「経済格差」、「親ガチャ」の先に、誰もが笑顔でいられる日常は決してやってこない。問題作『ニューオーダー』が、遂に日本公開

 喜びと悲劇のコントラストに、非情なまでに迫る一作だ。第77回ヴェネツィア国際映画祭で二部門に輝いたものの、いろんな映画祭で賛否両論が渦巻いたという。監督・脚本はメキシコの気鋭、ミシェル・フランコ。制作はまだコロナが猛威を振るう前だったとのことだが、これからの世の中がこの映画のようにならないという保 […]