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クロックワークス

  • 2024年7月5日

月探査ミッションにたった一人で挑む宇宙飛行士の物語を、圧倒的な臨場感で届ける『THE MOON』

 「国(世界)からの期待」と「自分以外誰もそこにはいないという、文字通りの孤独」のド真ん中にいる若者が、その両方から強く腕を引っ張られながら、それでも最善を尽くそうと奮闘している物語、との印象を受けた。長時間、ハラハラさせられっぱなしだし、いろんな難関に出会う主人公に接するごとに「うまくいってほしい […]

  • 2024年6月27日

もしこんなことが自分の身に起こったら? ポン・ジュノ監督も称賛する一作が日本公開。『スリープ』

 実際にこんなことがあったら、しかもそれが自分の配偶者の身に起こったら、「夜が怖くてたまらなくなる」はずだ。が、この映画にはコメディの風味もあり、SF的なところもあり、同時にしっかりラブストーリーとして成立している。味付けにグラデーションがある。  夫・ヒョンスと妻・スジンは高層マンションに住んで安 […]

  • 2024年6月7日

観る者の「良心」に訴える重厚傑作。濡れ衣を着せられた少年たちの無罪を証明するため奮闘する刑事の姿を描く。『罪深き少年たち』

 視聴者の「憤怒」を呼び起こし、「正義感」に呼びかける。そうした作品が最近はとみに多くなった印象がある。そして、ほぼそれらは実話ベースである。一定の層が富と権力を持ち、のうのうと生きる陰で、多くの正直者がバカを見ている。21世紀も、もう4分の1が経ってしまうというのに、この実情はぜんぜん変わらない。 […]

  • 2024年6月1日

愛する者を奪われた「よそ者」の気持ちがわかるか! 感情移入必至のエクストリーム・アクション『FARANG/ファラン』

 産声をあげたその瞬間から「悪」な人などいないはずだが、一度「悪」に染まると、その払拭は自分の力だけではどうにもならないのだろう。「悪」方面で光り輝いた者ほど、本人の意思など関係ないところで、「悪」方面からの熱い、カムバックに向けてのラブコールを受け続けることになる。更生とは、かくも難しい。  映画 […]

  • 2024年5月23日

天国から休暇をもらって地上に降りてきた母と、「アメリカで大学教授をしているはず」の娘が過ごした三日間。必見のファンタジーストーリー『母とわたしの3日間』

 夢のある作品だ。藤子不二雄のSFマンガにありそうだな、とも感じた。  母・ポクチャは、亡くなってもう3年目になるが、成績優秀の自慢の娘・チンジュに会いたいとばかりに、天国から3日間の休暇を与えられて地上に降りてきた。母からは娘が見えるし声も聞くことができるけれど、娘から母親は見えないし声も聞こえな […]

  • 2024年5月18日

男として、父親として立ち上がる時が来た。名優アントニオ・デ・ラ・トレ主演のノワール・アクション『ティアーズ・オブ・ブラッド』

 父として、夫として、仕事に就く者として、男として。そのすべての分野で等しく優れている者など、果たして世の中のどこにいるだろうか。どこかに力を注げば必ずどこかがおろそかになり、つまり、どうしようもなくデコボコしてしまう人間像こそが現実のものだろう。この映画の主人公レオは老境に入って久しい人物だが、映 […]

  • 2024年5月10日

元特殊部隊員がやむを得ず取った行動とは——善悪の概念を揺さぶるクライム・アクション『トランスフュージョン』

 衝撃的な内容だ。軍人とはこんなに切ないものなのか。上の者の命令に従って、がんがん軍事行動をして、自分の命は助かって、退役したところで、出くわした風景がこれなら、いたたまれない。  主人公のライアンは元特殊部隊員。全身これ鋼という感じで、身体能力に優れている。強い者の強さを大いに味わいながら過ごして […]

  • 2024年5月10日

2555年からの使者が2022年に降り立つ。地球の存亡をかけたフランス製SFエンタテインメント『フューチャー・ウォーズ』

 「妙にリアル」なところに惹かれてしまう。逆に言えば、「はるか遠い未来の話」という枠に収まっていない。そう考えると、1950年代や60年代前半の映画で、なかば牧歌的に描かれていたような未来や宇宙の風景は本当に「今は昔」となった。  監督・脚本・製作のフランソワ・デスクラックは2009年からこの作品を […]

  • 2024年5月2日

36人の女性に危害を加えた男の正体とは? ソビエト連邦末期の実話を基にしたサイコ・スリラー『殺人鬼の存在証明』

2021年制作のロシア映画が公開されることになった。社会派、ミステリー、歴史もの、サスペンス、SF、いろんな言葉が思い浮かぶが、どれもしっくりこない。その間を悠々と泳ぎまわりながら、観る者を、妖しい世界へと案内してくれるといおうか。  描かれている時代はソビエト連邦崩壊までの、およそ10年間。199 […]

  • 2024年4月11日

「外は謎の闇」、極限の状況に置かれた人間がとった行動とは? 強烈な印象を残すSFシチュエーション・スリラー『ザ・タワー』

 一瞬で壊れる日常のもろさ、その後の言動によってあぶりだされる各人の品性。観た後も深い余韻を残すとともに、「こうなった場合、自分はどう行動するだろう。ここまで生き残ることに執着できるだろうか」と自問自答せずにはいられない一作がこの『ザ・タワー』である。  物語の舞台は、フランスのとある団地。団地の住 […]